建設業の運転資金の平均はどのくらいが適正か①

平均月商と資金繰り

平均月商と資金繰り

平均月商は、企業の1ヶ月の平均的な売上高を示す指標です。どんな業種においても、平均月商は資金繰りとの関連性が非常に深く、以下のような点が挙げられます。

資金計画の基礎: 平均月商は、今後の資金計画を立てる際の重要な基盤となります。平均月商が分かれば、概ねどの程度の収入が見込めるのかを把握し、支出計画を立てることができます。

運転資金の目安: 平均月商に基づいて、運転資金の目安を算出することができます。運転資金とは、日々の事業活動に必要な現金のことです。 本来は支出金額のから割り出していくのが望ましいですが、まったくわからない場合には、平均月商の2-3か月(できれば3か月以上)を目指して確保していく必要があります。

借入額の判断材料: 銀行から融資を受ける際、平均月商は審査の重要な要素となります。平均月商が高いほど、返済能力があると判断され、融資を受けやすくなります。融資をお願いする金額について、細かいところを抜きにして大まかにお願いするときに、以下のようにお願いしてみてはいかがでしょうか?

例:「うちの平均月商は800万円だから、2か月分の1600万円を融資してほしい」

平均月商から考えるべきこと

平均月商だけでは、資金繰りの状況を正確に把握することはできません。以下の点についても考慮する必要があります。

  • 売上債権の回収期間: 受注から代金回収までの期間が長いと、資金繰りが悪化する可能性があります。売上債権が焦げたときに備えて、予備資金の確保をどの預金にプールしておくかが大切になります。
  • 支払サイト: 材料費や人件費などの支払サイトが短い場合、資金の流出が大きくなり、資金繰りが厳しくなる可能性があります。売上債権の回収サイトと支払サイトをイコールにしている先をよく見かけますが、その場合に、一度回収でコケた場合でも支払いは確実に行うために、どこに資金を残しておくかだけでなく、支払サイトと取引条件についても、有利に交渉できる方法を検討してください。
  • 季節変動: 建設業は季節変動の影響を受けやすく、月ごとの売上高が大きく変動する場合があります。季節変動について建設業は、気候条件の影響を大きく受けるため、季節変動が顕著な産業です。ここからちょっと脱線しますが、季節変動についてすこし詳しく見ていきます。
  • 季節変動>冬季の施工制限: 寒さによるコンクリートの強度不足や、凍結による地盤の変形など、冬季は施工が制限される工事が多く、生産性が低下します。
  • 季節変動>雨季の影響: 雨季には、屋外での作業が難しくなり、工期が遅延する可能性があります。
  • 季節変動>夏季の暑さ: 夏季の暑さは、作業員の熱中症のリスクを高め、生産性を低下させます。
  • 季節変動がもたらす影響
  • 売上変動: 季節によって工事が集中したり、中断したりするため、売上高が大きく変動します。
  • 資金繰りへの影響: 売上高の変動は、資金繰りにも大きな影響を与えます。繁忙期には資金が不足し、閑散期には資金が余るといった状況が発生する可能性があります。
  • 人員配置の難しさ: 季節変動に対応するために、人員の増減が必要となり、人材の確保や配置が難しくなることがあります。
  • 季節変動への対応策
  • 工事の計画的な配分: 季節変動を考慮し、工事の計画的な配分を行うことが重要です。冬季は屋内での作業を優先したり、雨季には土木工事を控えるなど、季節に合わせた工事計画を立てましょう。
  • 在庫管理の最適化: 季節変動に対応するためには、材料の在庫管理を最適化することが重要です。繁忙期に備えて必要な資材を事前に確保しておく一方で、過剰な在庫を抱えないように注意しましょう。
  • 人員の配置調整: 季節変動に対応するために、人員の配置を調整する必要があります。繁忙期には、人材派遣会社を利用したり、残業時間を増やすなど、人員を確保する方法を検討しましょう。
  • 資金繰り対策: 季節変動による資金繰りへの影響を最小限に抑えるため、資金計画をしっかりと立て、必要に応じて金融機関からの融資を検討しましょう。
  • 多角化: 建設業以外の事業に参入したり、地域を広げるなど、事業を多角化することで、季節変動の影響を緩和することができます。
  • 工事の規模: 大規模な工事を受注した場合、一時的に資金が必要となることがあります。
  • 材料費の高騰: 材料費の高騰は、直接的なコスト増となり、資金繰りを圧迫します。

平均月商と資金繰り改善の関係

平均月商を増やすことで、資金繰りを改善することができますが、以下の点に注意が必要です。いわゆる黒字倒産に陥る場合、無理な資金計画による売上増加策をとってしまって裏目にでることが考えられます。

  • 無理な受注: 平均月商を増やすために、無理な受注をしてしまうと、品質の低下や納期遅延につながる可能性があります。
  • コスト増: 平均月商を増やすために、広告宣伝費を増やしたり、人材を雇用したりすると、コストが増加し、利益が減少する可能性があります。

次回は無理な資金計画による売上増加策になってしまわないようにどうしたらいいかを解説していきたいと思います。

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